日程と題材
今回、第2回の読書会は、2015年3月21日(土)に開催されました。出席者は5名でした。
題材は、蟻川恒正「尊厳と身分」石川健治編『学問/政治/憲法』(岩波書店)。参考文献として、木庭顕『ローマ法案内』(羽鳥書店)44〜53頁と、太宰治『走れメロス』を扱いました。
論文の構成
まず、司会より、論文の内容についての紹介がありました。
1.Waldronの議論を紹介
「高い身分」の普遍化
2.Waldronの議論の必然的帰結
尊厳の拡張に際し、能力の検証の手続が必要である。
3.要求される能力の内容について『走れメロス』を題材に説明
制度の期待に応える行動をとること
4.憲法解釈への影響
憲法における個人の尊厳についても、能力の検証が必要ではないか。
ⅰ.個人に能力の証明を要求する
→個人に無理を強いることになる
ⅱ.個人に能力の証明を要求しない
→権利が空虚にならないか
その上で、4.ⅱの場合、能力を有しない人についてはどのような対応をすることになるのか、能力を証明する具体的な仕組みは何か、といった問題提起がなされました。
さらに、現行の制度においても、選挙権や公務員になるための要件など、一定の能力の証明が要求されている場合があるとの説明がありました。
意見交換
読書会で述べられた意見について、その一部を紹介します。
まず、今回の読書会では、著者のいう「公共的義務」とは何か、という点に関心が集まりました。
著者は、公共的義務の具体例として、出頭保証人制度において、制度の期待に応えて出頭することを挙げているのですが、現行の法制度ではどのような義務が公共的義務にあたるのかといったことが話し合われました。
次に、論文の意義について話が及びました。この論文は、従来の憲法学が想定していた、「個人の尊厳」と「自由」や「平等」とが決して順接の関係にはないことを指摘しているものの、結果としてどのような選択肢をとるべきかということについて、具体的に何も論じていないとの指摘がありました。
さらに、一度憲法上の権利を獲得した個人は、その法制度の期待に応える意欲を失うというモラル・ハザードに陥っているのではないかとの指摘がありました。
その他、著者のいう、能力の検証の方法や結果、そこから漏れる人の手当如何によっては、新たな身分制社会を生み出すことにもなりかねないとの指摘がありました。
4月の読書会及び今後の題材について
4月の読書会の題材は、次に変更になりました。
さらに、今後取り上げるかもしれない題材について、追加がありました。
最後に
これで第2回読書会の記録は終わりです。
コメント欄にて自由に討議してください。